※当記事はぼんさいじ氏の寄稿記事です。
今回は、経済学者カール・メンガーの著書『貨幣の起源』の内容に触れつつ、Decredの未来について考えてみたいと思います。
カール・メンガーとは?
19世紀にオーストリアで活躍した経済学者です。
主著『国民経済学原理』では、財(商品)の価値が労働によって定まるとした従来の労働価値説に対して、財の価値が効用(消費者の満足度)によって定まることを主張しました。
メンガーの学説を受け継ぐ経済学者の一派は、「オーストリア学派」と呼ばれ、ヨーゼフ・シュンペーター(イノベーション論)やフリードリヒ・ハイエク(ノーベル経済学賞受賞)などの高名な研究者を輩出しました。
メンガーのいう「貨幣の成り立ち」とは?
さて、そもそも貨幣は、どのようにして生まれたのでしょうか?
19世紀当時、貨幣を国家や立法者が創り出した制度として説明する学説が有力でした。
しかし、メンガーは違いました。貨幣は、「市場そのものから生まれる」と主張したのです。
メンガーは、貨幣の起源を明らかにするために、「売れやすい財」という観点に着目しました。
財には、「すぐに売れるもの」と、「なかなか売れないもの」があります。
例えば、トウモロコシや綿花は、市場価格ですぐに売却できますが、解剖標本やサンスクリットの文献は、適正な価格で売ることが難しい場合があります。
また、メンガーにとって重要なのは、単に買い手が存在することではなく、「いつでも適正な価格で売却できるかどうか」でした。
そのため、人々は取引の中で自然と「より売れやすい財」を求めるようになりました。
そして、自分の商品を「より売れやすい財」に交換する行動を繰り返した結果、その商品が交換の媒介として広く受け入れられ、最終的に「最も売れやすい財」が「貨幣」となったのです。
実際には、歴史の初期段階から、世界の各地で「最も売れやすい財」である金や銀などの貴金属が「貨幣」として使われていました。
では、なぜ貴金属が貨幣として選ばれたのでしょうか?
なぜ貴金属が貨幣として選ばれたのか?
金や銀などの貴金属が貨幣として選ばれた理由について、メンガーは主に次のような特徴を挙げています。
①世界中で需要がある。
→どの地域でも、文明の初期段階から、装身具や建築装飾に使われるなど、人々によって強く望まれる対象だった。
②需要に対して供給が限られている。
→産出量が限られていて、市場で高い価値を維持しやすかった。
③誰でも少額から利用できる。
→少しの量でも価値を持つため、富裕層だけでなく一般の人々も少額から利用できた。
④輸送コスト・保管コストが低い。
→高い価値のわりに輸送コストが低く、耐久性が高いので保管コストも低かった。
⑤真贋判定・品質確認が容易である。
→ある程度の経験があれば真贋を判定しやすく、刻印を施すことによって重量や品質を保証できた。
そして、実際に貴金属は、国家が硬貨を鋳造する以前から、重量を基準として交換の媒介に利用されていました。
その後、国家が硬貨を発行し、その重量や品位を保証することで、貴金属の「売れやすさ」はさらに高まりました。
つまり、国家の承認によって「初めて貴金属が貨幣になった」のではなく、「より完全な貨幣」に仕上がったというわけです。
以上がカール・メンガーの『貨幣の起源』の内容になります。
なお、読みやすくするため、一部用語の置き換えなどを行なっています。
Decredへの当てはめとその未来
メンガーが重視した「売れやすさの特徴」をDecredにも当てはめて考えてみましょう。
①世界中で需要がある。
→世界中のユーザーによって保有・売買されている。
②需要に対して供給が限られている。
→Decredの発行上限は2100万枚であり、供給量があらかじめ限られている。
③誰でも少額から利用できる。
→Decredは1Atomの単位まで分割でき、誰でも少額から保有・送金・受取ができる。
④輸送コスト・保管コストが低い。
→国境を越えた送金やパソコン・スマホのウォレットによる保管が容易である。
⑤真贋判定・品質確認が容易である。
→ブロックチェーン上で取引履歴を検証できるため、偽造や二重支払いを防ぐ仕組みを備えている。
こうして見ると、Decredはメンガーが重視した「売れやすさの特徴」を備えていると言えます。
さらに、Decredは、PoWとPoS のハイブリッドシステム、オンチェーン・ガバナンス、自己資金で自立する「トレジャリー」システムなどの「他の暗号資産にはない特徴」を備えています。
「売れやすさの特徴」と「他の暗号資産にはない特徴」を持つDecredが、今以上に多くの人々の手に渡り、「貨幣」の機能の一つである価値保存機能(Store of Value)としての地位を確立する、そんな未来が見えてこないでしょうか。
まとめ
カール・メンガーの『貨幣の起源』によると、「貨幣」とは、国家が法律によって作り出すものではなく、市場参加者の選択によって自然発生的に形成される制度だということです。
その視点から見ると、Decredを含めた暗号資産が将来どのような役割を果たすのかを考える上でも、多くの示唆を与えてくれるのではないでしょうか。
参考文献・資料
カールメンガーとその時代 https://www.lib.hit-u.ac.jp/images/2020/01/panel_1.pdf
Carl Menger Introduction by Douglas E.French『The Origins of Money』2009
